顔面神経麻痺
Bell麻痺/ベル麻痺
Hunt症候群/ハント症候群
鍼灸治療&スーパーライザー
はじめに
はじめまして鹿児島市荒田にある鍼灸院はりきゅう院さくらです。院長の田中隆一と申します。
当院ホームページをご覧いただきありがとうございます。当院では顔面神経麻痺の症状でお悩みの患者様に少しでもお役に立てるよう日々研鑽しております。
顔面神経麻痺を当院で鍼灸治療を行なっている田中隆一は日本顔面神経学会主催の顔面神経学会への参加及び顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会認定試験を受け合格をしています。
九州北部の方で顔面神経麻痺でお困りの方は私が信頼できる鍼灸師をご紹介させていただきます。
そこは福岡県の田中はり灸療院さんです。天神駅からも近く通いやすい立地です。
田中はり灸療院の遠藤彰宏先生も同じく顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会に参加され合格している仲間です。
また昔から不妊鍼灸の会で一緒に勉強している仲間ですので、長崎県や佐賀県の九州北部の患者様は遠藤先生にぜひご相談ください。
このページでわからないことがあればお電話やメールにて何なりとご質問いただければと思います。
2023年5月に「顔面神経麻痺の診療ガイドライン2023年度版」がリリースされました。今回このなかで鍼灸の視点で大きな変化がありました。
それは「鍼灸施術の推奨度が上がった」という事です。これはガイドライン作成委員会の粕谷大智先生(鍼灸師)を中心として、顔面神経麻痺に対し鍼灸の効果がどのように作用しているかを研究されていた賜物だと思います。
粕谷先生には感謝しております。
現在抹消性顔面神経麻痺への考え方として次ように言われております。
顔面麻痺の予後不良の味方、評価方法、治療上の注意、鍼灸治療については、鍼灸師間で共通理解が乏しく、多職種との連携もその点でも課題も大きい。現在、麻痺の治療は予後不良例に対して麻痺の回復過程で後遺症をいかに少なくさせるかが重要となる。後遺症を予防し、患者のQuality of life (QOL)を向上させることがゴールである。それには麻痺診療手引きを理解し、他のメディカルスタッフ同様、鍼灸師も適切な診察・治療・セルフケアの指導等を行い、専門医との連携が図れることが重要となる。 (全日本鍼灸学会雑誌,2023年第73巻1号,7-26 ここまで分かった鍼灸医学 -基礎と臨床の交流―末梢性顔面神経麻痺に対する鍼灸治療の効果と現状)
ガイドラインでの推奨度は上がりましたが、顔面神経麻痺に対して正しい知識、正しい情報を持っている鍼灸師が多いといえる状況ではありません。はりきゅう院さくらでは顔面神経麻痺に対して常に最新の情報にアップデートしていく環境作りをしております。
安心して施術を受けていただけるよう努めてまいります。
発症して間のない急性期は
病院での治療が最優先
(顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版より作図)
顔面神経麻痺に限らず、鍼灸院に治療を求める方の中には健康思考、自然思考という表現ができるかもしれませんが、
「できるだけ薬を飲まずに自然に治したい」、「ステロイド剤を服用したくない」と考える方がおられます。
ですが、急性の顔面神経麻痺は、発症後は速やかに病院で治療を開始する必要があります。
その理由としては、
1)顔面神経麻痺の原因を追究する(医師の仕事)
顔面神経麻痺になって、まずは「特定できる原因があるのか」「原因を特定できないベル麻痺なのか」を耳鼻科や神経内科の先生に診察してもらう必要があります。
顔面神経麻痺は大きく分けると中枢神経と呼ぶべき「脳」の問題なのか。末梢神経「脳から出た枝」の神経なのか。
「ここを見極めること」「その原因は何か?」
この診断を行うというところは医師の仕事ですので、是非、近隣の医師にご相談ください。
2)早期に炎症を抑える(医師のお仕事)
顔面神経麻痺の多くは『Bell麻痺』か『Hunt症候群』です。
この2つが約80%を占めています。
その際に起きているメカニズムは、側頭骨内の顔面神経管内での炎症によって栄養血管が圧迫され、顔面神経に栄養がいかず、麻痺が起こる事が原因です。
この炎症を速やかに鎮火させるためには、ステロイド剤や抗ウィルス薬の内服や点滴を病院の医師に処方してもらう必要があります。
炎症を火事が起こっていると考えると、この火事が起こっている状況では、最初の消火活動が大変重要です。
この初期消火活動だけを切り取った際、鍼治療のみは薬と比較して劣っていますので、発症初期は薬が重要です。
妊娠中の方、糖尿病を患っている方など、理由があって薬が処方できないと判断されたケースでは、より早いタイミングでの鍼灸をご検討ください。
(ステロイドを処方する、しないという判断をする人は医師である必要がありますので、自己判断はせずに必ず主治医の先生等と相談されてください)
その上で鍼灸院でできること
末梢性顔面神経麻痺の最新の治療の考え方
病院の診察は非常に短く、日頃の疑問を質問するような時間はなかなか限られてしまうかもしれません。
鍼灸治療は治療時間が長く、平均1時間程の治療のため、色々なお話をしながら治療を行うことが可能です。
顔面神経麻痺や耳鼻科疾患(突発性難聴、耳鳴り、めまい)で当院に来院する方が多いため、これまでの治療経験や、その度に文献を調べ続けて得た知識、色んな角度からアドバイスが可能です。
従来の考え方 |
早く神経再生を促進する |
神経再生を促せば麻痺は回復する |
再生促進は支配筋の収縮であり、随意的な筋収縮が低周波通電による筋収縮が行われる |
後遺症が認められた時点から低周波などの強い筋収縮は避ける |
新しい考え方 |
神経再生を抑制する |
麻痺の治療目標は病的共同運動の予防軽減 |
神経断裂線維があると、筋収縮により断裂線維の再生も促され、内膜も断裂されているため迷入再生が生じ、表情筋の過誤再生が起こる |
柳原法10点以下、ENoG値40%以下の麻痺は発症初期より強い筋収縮を避ける |
病院を受診した上で、鍼灸院での治療が必要な理由は
1)病院での治療とは別な治療効果
顔面神経麻痺に対しての鍼治療は後方支援の要素を持ちながら、継続的な回復を神経再生を抑制させながら丁寧に行います
その結果
2)顔面神経麻痺の後遺症を抑制する
※後遺症を抑制するという表現を使用していることについてですが、後遺症が出なかった方を何十症例と経験しながらも後遺症を0にできない方がいるため、抑制という言葉を使用しております。
鍼灸治療に限らず、現在の医療でも「病的共同運動を0」は難しい。
今後起こるであろう病的共同運動をどう小さくしていくか、というのは非常に大切な治療目標だと考えています。
近年の顔面神経麻痺の際のリハビリの指導やマッサージの指導方法などの考え方が大きく変わってきています。
「早期回復」を目指すリハビリから、病的共同運動、拘縮予防という点にシフトされているのが近年の顔面神経麻痺に対するリハビリですので、
その点も丁寧にお伝えさせていただきます。
3)スーパーライザーを使用して、星状神経節照射で顔面部を含めた末梢の血液循環を増加させ、回復を促す
病院で行われている治療の一つに星状神経節ブロックがありますが、ブロック注射ではなく
安全に光を照射し効用を促すことを目的に開発されたのがスーパーライザーです。
整形外科、婦人科、神経内科、耳鼻科、皮膚科とあらゆる病院で活用されている治療機器を鍼灸と組み合わせることで、治療効果を狙っていきます。
急性顔面神経麻痺とは
(左:中枢性顔面神経麻痺 右:末梢性顔面神経麻痺)
顔面神経麻痺は、大きく分類すると「中枢性顔面神経麻痺」「末梢性顔面神経麻痺」に分かれます。
中枢性顔面神経麻痺:「顔面神経麻痺の原因が脳内にある」
末梢性顔面神経麻痺:「顔面神経麻痺の原因が脳から出て、表情筋までの間のいずれかにある」
わかりやすく説明すれば、電車が遅延している状況で、
駅の中で問題がある場合が中枢性。次の目的地までの線路のいずれかで問題がある場合が末梢性という表現になります。
「中枢性顔面神経麻痺」
1.脳梗塞や脳出血といった脳血管障害が原因(全体の約4%)
2.顔面神経の麻痺以外に、手足の麻痺や、ろれつがまわらない(構語障害)などがある
3.CTやMRIでの検査の後、脳血管障害に対する処置が必要
4.末梢性の麻痺に比べて著名な麻痺ではない(額の皺を寄せることができる)
末梢の顔面神経麻痺より軽症に一件見えてしまう
5.ごく稀に、経過観察中に一度、回復傾向にあった麻痺が再び悪化してわかる(脳腫瘍による再圧迫等)
「末梢性顔面神経麻痺」の特徴(画像 右)
1.交通事故などの外傷によって発症
2.中耳炎、真珠腫など先に耳の症状を患い顔面神経麻痺がその後に起こる
3.急性末梢性顔面神経麻痺の大半は、「Bell麻痺」「Hunt症候群」が占める
文献によりBell麻痺は58%、 Hunt症候群15%など、その割合は報告によって異なります。
顔面神経麻痺の診察について
「医療機関での顔面神経の診察の流れ」
「Bell麻痺」「Hunt症候群」が圧倒的に多い中で、まずは「中枢神経性の顔面神経麻痺がないか」(症状、随伴症状、MRI等)の確認が診察で行われ、何も原因となる特徴はない場合に末梢性顔面神経麻痺の「Bell麻痺」「Hunt症候群」という診断名がつきます。
Bell麻痺&Hunt症候群
「末梢性顔面神経麻痺」のそのほとんどは「Bell麻痺」「Hunt症候群」が占めています。
【疫学】
※どれぐらいの割合で顔面神経麻痺が発症しているか
15~30/10万人(年)
〔Am Fam Physician.2007 Oct 1;76(7):997-1002〕
最も多いのは,特発性(原因不明)の末梢神経障害であるBell麻痺で、一側顔面神経麻痺の60~75%を占めます.性差は無く,全年齢で発症しうるが,ピークは40歳代である とのことです.
次に頻度が多いのは Ramsey Hunt症候群で,約20%を占めます.
Bell麻痺について
Bell麻痺のBellはイギリスの有名な解剖学者Sir Charles Bell (1774-1842)が由来。
現代のように薬が発達していない一昔前でも、完全回復する症例は多く報告されている。典型例は48時間以内に麻痺がピークをむかえ、7日間は増悪することもある。文献によっては、非典型例として2週間増悪という報告もあるが、非常に稀。未治療でも85%が3週間以内に改善傾向(71%完全回復,12%軽微,13%軽度,4%重度)残り15% 3-6ヶ月で改善傾向〔Acta Otolaryngol Suppl.2002;(549)4-30〕ということもあり、比較的予後が良い疾患として医学界では認識をされている。
Bell麻痺の特徴として、一度回復した麻痺が経過中に悪化をすることはない。
※短期間(半年以内)で再発した場合には、他の疾患を改めて精査する必要がある。
Hunt症候群について
コロンビア大学神経内科教授James Ramsay Hunt(1872-1937)が1907年ウィルス性顔面神経麻痺の概念を提唱 VZV:水痘帯状疱疹ウイルスによる耳周辺の発疹を伴う顔面神経麻痺を「Hunt症候群」として現在にも名前が残っている。
Bell麻痺とHunt症候群の鑑別
典型的な「Bell麻痺」であれば「麻痺の程度は比較的軽度、耳症状がない、額のしわ寄せが困難。」
典型的な「Hunt症候群」では、「麻痺の程度は比較的高度、耳症状あり、額のしわ寄せが困難。」
と一般の型でも判断がつくのが特徴的です。
臨床では、Bell麻痺の表情をしているが重症度が高く、回復が長引く方がいます。
次の項のウィルス説は、まだ詳細に判明しているところまではいきませんが、これまでのBell麻痺の回復の良好なものと、回復がゆっくりなものの正体が違うことの説明としては、非常に納得ができます。
McCormickがBell麻痺の病因の一つとして単純ヘルペスウイルス(HSV-1:単純疱疹ウィルス)の関与を提唱。
その他に水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化だが、疱疹を欠くZSH:zoster sine herpete(Hunt症候群の亜型)が存在する。
これにより末梢性顔面神経麻痺にウイルスが関与していない割合(NON HSV/VSV)が20~25%ぐらいではないかとする見解もある。
ウイルスの存在を証明するために抗体を測定するが、発症から1週間から10日間は抗体が検出されないため、従来の「Bell麻痺に」にはステロイドを処方する医師、またはウイルス説を考慮し、抗ウイルス薬を投与する医師に分かれている。
多くの末梢性顔面神経麻痺の診断は確定診断(絶対にこの病気と診断できる)は難しく、推定診断(この病気が予想される)という中で治療が行われているという点が、患者さんが考えている診断との大きな違いとして考えられる。
当院に来院される方の約7割は抗ウィルス薬(バルトレックス,バラシクロビル)を処方されており、年々抗ウィルス薬が処方されるケースが増えているようです。
末梢性顔面神経麻痺と解剖
神経の再生は1mm/日
膝神経節から表情筋までは約90mmということが解剖学的に考えている長さです。
そのため、神経の再生は約90日は必要になってきます。
発症から回復に要する時間が単純に約90日ではないのは、発症→変性→回復という過程が必要であり、回復が始まるまでに最低でも発症から2週間が必要であることが、顔面神経麻痺の回復予測が単純ではないところです。
側頭骨内の顔面神経管は37mm程の長さで、2つの膝部を持つ複雑な走行をしている。
『May M:The Facial Nerve. P.36,Thieme Inc.New Tork,1986より改変転載』
人体最少の神経管 顔面神経管(側頭骨)
最も狭いところは 1mm もない
さらに膝神経節部では直径はわずか1mm程という人体で最も細い神経管。
その狭い骨性空間でもっとも外側を栄養血管が走行している。
その栄養血管とともに神経が走行している。
『Ogawa A,Sando I :Spatial occupancy of vessels and facial canal.Ann Otol Rhinol Laryngol,91 :14-19,1982. より改変転載
この時、栄養血管が圧迫されることで、神経が栄養失調を起こす。
この細い管の中に約 4000 本の神経線維があり、その中の細い線維は副交感神経線維と考えられています。
細い管内で虚血・浮腫・神経絞扼という悪循環
顔面神経管内で神経炎が生じる。この神経炎に引き続き、浮腫によって骨性空間では神経や栄養血管の圧迫性絞扼障害が生じる。
この時、神経炎の状態や炎症の強さによって圧迫の程度が変わる。
圧迫の強さによって、神経損傷、変性の程度が異なる。
栄養血管が圧迫され神経が栄養失調状態(虚血)になり、尚且つ浮腫は憎悪するという悪循環に陥るため、できる限り早期に病院で薬物療法(ステロイド、大量ステロイド、抗ウイルス薬)、重症度によっては入院による治療が必要です。
顔面神経管は円筒状の神経管のため、神経線維はほぼ均一の損傷となる。
病院での治療は初期の炎症を抑えるという目的があるので、早期に治療を受けることが大切です。
年に数例、病院で治療を受けずに当院へ来院される方がいらっしゃいますが、治療の役割、目的が異なることをきちんとお伝えしております。
※妊娠中や、糖尿病の方は主治医の先生に相談いただき投薬治療を受ける必要がありますので、主治医の先生にご相談の上で耳鼻科や神経内科を受診してください
表情を動かす以外も多彩な顔面神経
顔面神経は、表情筋を動かすという運動神経以外に、
「涙を分泌する」大錐体神経
「鼓膜の緊張を保つ」アブミ骨神経
「唾液の分泌」「舌の感覚を司っている」鼓策神経
「嚥下を促す」茎突舌骨筋枝、二腹筋枝
これらの働きが顔面神経の働きによるため「顔の表情が動かない」以外に顔面部で様々な症状を呈します。
顔の筋肉を動かす顔面神経
顔の感覚を支配する三叉神経
顔の表情筋は23個の皮筋からなっています。
23個の筋肉がそれぞれ協力して働くことで、表情が豊かになります。
これは、あたり前のように動いていますが、麻痺が起きるとその日常の自然な凄さを実感します。
ちなみに顔面神経麻痺には、名前もついていない細かい筋肉も存在しているため、便宜上23個というのがとても面白いところでもあります。
膝神経節から、表情筋まではおよそ90mm
1mm/日のスピードで神経軸索は再生していきます。
余談ですが、顔面神経麻痺になっても目を開くことはできる。
これって不思議ではないでしょうか?
この目を見開く動作は、動眼神経という神経の役割です。
もしかしたら、何か緊急事態が起こった際に、顔が麻痺しても避難する事ができるように、目だけは別の神経に役割を分けたのかもしれません。
顔面神経麻痺の評価と重症度
顔面神経麻痺の患者さんにとって最も大切のは、この項目なのかもしれません。
「私の麻痺って治るのだろうか」「治るとするなら、いつ治るのか」が知りたいと思います。
顔面神経麻痺の評価法(柳原法)
顔面神経麻痺の評価方法としては、柳原法、House-Brackmann法、Sunnybrook法などがある。
日本国内では、柳原法40法が最も広く使われており、海外の論文を書く際に他の方法を併記するというのが一般的であり、患者さんに「どんな検査をしましたか?」とお尋ねすると、柳原法を受けている方に多く遭遇する。まず、ここでは簡単に柳原法について紹介します。
柳原法は、上記1~10の各項目4点で項目の合計が40点という評価方法で、初診時の評価および経過観察を行い35以上を治癒として評価します。
「4点」左右さなく正常に動く
「2点」動くもまだ左右差あり
「0点」全く収縮しない
という3つに分類をして点数を合計します。
注意としては、2点の評価が先生ごとで異なるので、毎回同じ先生の評価は参考にあるが、評価者が変更になると点数が当てにならないことがある。
4点と0点の中間が2点という意味ではないところがその原因であり、4点正常、0点全く動かない間はどれを2点とするか評価が分かれるというところが原因です。
この柳原法は、簡易的であり患者さんの正確に予後を知りたいという正確性を知ることは難しいものの、経過を観察する上ではとても重要な評価法です。
麻痺の経過は、7日頃に完成する症例が存在するため、発症0-3日では柳原法22点以上である症例でも予後の悪い例が存在します。
発症後すぐで軽症だと言われても、数日悪化傾向がある場合には、再び耳鼻科の担当医もしくはセカンドオピニオンとして別な治療が必要かを確認してみてください。
発症7日以降に22点以上であれば軽症と予測でき、充分な回復を期待できる。
Seddonの分類
Sir Herbert Seddon
顔面神経麻痺の神経の損傷度合を分類したのがSeddon分類です。
「神経無動作」これは正座の後の痺れを想像してください。
急激に圧迫が加わることで痺れが発症し、その後圧迫が解除されると痺れも回復する。これは麻痺でも同じことが言えます。急激に圧迫されることにより顔面神経麻痺が発症しているが、神経の損傷度合が小さい、もしくは全くないため、圧迫が解除されるにしたがい麻痺も「完全回復」となる。
「脱髄」(Neurapraxia)
これは顔面神経炎をおこしている状態。麻痺の程度も軽い。
「軸索断裂」(Axonotmesis)
これは遡行変性 そこうへんせい(dying back)とよばれる変性です。栄養血管が圧迫されることによって、栄養失調が起こる。
そのために末梢側から変性が起きる。(末梢から中枢側に向かって変性が進行する)
末梢性顔面神経麻痺の多くは、「神経無動作」と「軸索断裂」が混在している状態です。
軸索断裂は回復はするが、完全回復とはいかない重症例ということが予想される。
「神経断裂」(Neurotmesis)
ワーラー変性は神経の断裂です。神経断裂は、神経内膜と軸索が断裂されることです。
「軸索断裂」(Axonotmesis)
と
「神経断裂」(Neurotmesis)の違い
「軸索断裂」(Axonotmesis)は、内膜が残っている状態です。
そして、麻痺は末梢から中枢に向かって起きています。
この時の神経の回復も、末梢から中枢に向かって再生が起こります。
表情筋から膝神経節まではおよそ90mm。約3か月で再生します。
「神経断裂」(Neurotmesis)は軸索と内膜の断裂です。
内膜も損傷を受けたことで、迷入再生が起こります。
この時、再生した迷入再生は半永久的に存続します。
Sunderlandの分類
余談ですが、Sunderlandの分類というものがあります。これはSeddonの分類をさらに発展させて、神経束の損傷があるとステージ4となる。神経上膜を破るとステージ5の神経断裂となる。
しかし、これは同じ麻痺の分類でも顔面神経麻痺の分類には適さない。なぜならば「顔面神経には感覚神経(体性感覚線維)がない」「神経束構造が欠落している」という神経の構造が上肢、下肢とは異なるため。
ENoG(電気生理学的検査)
『顔面神経麻痺に対する電気生理学的検査(大阪医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 萩森伸一日本耳鼻咽喉科学会会報2017年 120 巻 10 号 1266-1267)』 より引用
電気診断法には、神経興奮性検査(NET)、mazimal stiulation test(MST),electronneuro-graphy(ENoG)、磁気刺激誘発筋電図(TMS)、逆行性顔面神経誘発電位検査(AFNR)、瞬目反射(BR)などがある。
ここでは代表的なENoG(electronneuro-graphy)を紹介します。この検査は、軸索変性の評価に行います。発症から10 日から14日で計測を行います。
このENoGは40%以上の場合には4ヶ月を過ぎて病的共同運動の出現はしない。しかし、40%以下の場合には病的共同運動が出現しやすい。
脱髄のレベルでは健側と患側の振幅は差はないが、上記のグラフのように振幅が小さいグラフ(振幅低下)を示した場合には軸索変性があることがわかります。
軸索変性の程度は2種類で、「軸索断裂」と「神経断裂」に別れます。
検査の目的も予後(治る可能性はどれぐらいか)だけではなく、手術が必要かどうかの判定にも使用されています。神経変性の逃れた割合が40%であれば予後は良く、10%を切ると予後は不良というのが一般的な検査診方と考えられている。
柳原法とENoGを組み合わせると、このような経過が平均的なそれぞれの経過となります。
目安になるのが、発症4週間で柳原法で10点を超えてくるかどうか。
ここを超えてくると完全回復の割合は増えてきます。
一方でスコアだけでは見えない顔面神経という構造的な弱さを元々持っていることもあり、後遺症を完全に防ぐのは難しいこともわかってきています。
この後いよいよ、当院での鍼灸治療ではどんなことを意識して治療を行っているのか、ご説明いたします。
顔面神経麻痺に対する当院での治療
鍼灸治療とスーパーライザー
はりきゅう院さくらで行っている
顔面神経麻痺の治療
当院の顔面神経麻痺への考え方では、現代医学的な視点での鍼灸治療を行うため、基礎知識として上記のような医学書が中心になります。
1. 顔面部へ細い鍼を使用して、神経の回復を促す鍼治療
2.顔面神経麻痺リハビリテーション技術講習会(顔面神経学会主催)という医学会で推奨されているリハビリに準拠して、病的共同運動の予防。
最新のご自宅で可能なリハビリとして、セルフケアのマッサージが特に推奨されています。
3. スーパーライザーを使用し星状神経節照射(SGB)を行い、交感神経の抑制を狙い全身の血流を上げ、患部の治癒力を促進する
4. 首、肩の凝り感が顔面神経麻痺後に強くなっている。また、側頭部の頭痛があるなど症状に合わせて鍼灸治療を追加
(マッサージの方法)
・強さに関わらず(強い・弱いにどちらでも良い)丁寧に縁を描く
・右手、左手で、左右に引き伸ばす(対象の筋肉が伸びるように)
・口の中に手を入れて表と中から刺激する
(日常生活での注意点)
・大きな顔の動きは控える。
(大笑い、あくびなど)
イメージを患者さんと共有する際の参考として、「モナリザのような微笑み」という「微笑」を推奨していて、あれ以上大きい動きは可能な限り避けてください、とお願いしています。
※鍼治療の中で大切なお約束として、発症6か月未満の症例に対し電気治療は行っておりません。
その他の鍼灸治療
東洋医学や中医学の考を元に鍼灸治療を行うケースでは、病因(病気の原因)はAの疾患(顔面神経麻痺)、Bの疾患(腰痛)と疾患は異なっても、体質を含め身体の状態が同じであれば同じ治療を行うのが原則です。(同病異治、異病同治)
この考え方は、不定愁訴のように実態を掴みにくい症状には得意な面を発揮しますが、顔面神経麻痺で「顔に治療をしない」という治療方法になります。
顔面神経麻痺に対する鍼治療に関しては、当院では現代医学的な考え方に基づく鍼治療、スーパーライザー、リハビリテーション実施を採用しております。
使用している鍼について
日本の鍼は非常に細い
鍼治療で使用する「はり(直径0.1mm)」は、鍼そのものが「注射針よりもずっと細い」のはもちろんですが、
毛髪(直径0.15mm)と比較してもさらに細いのが特徴的です。
※日本の鍼は中国の鍼と比較してさらに細いという特徴を持っています。
日本の鍼技術 管鍼法
細い鍼を使用する際に、江戸時代から日本に登場したのが、管を使用して鍼を行う管鍼法という方法です。
この管は「鍼管(しんかん)」と呼ばれる筒状の道具で、治療を行う際の操作性だけではなく。
鍼による痛みを抑える効果をもっています。
美容鍼のようにお顔にたくさん鍼が刺さっている状態をみたことがある方がいると思いますが、顔面神経麻痺の際には、お顔に鍼を行っていきます。
お顔は、痛覚もたくさん多い中で、痛みがなく鍼灸を行うことが可能なことは「鍼が細いこと」「鍼管を使用する」という2点が非常に大切になってきます。
使用鍼のシングルユース
(ディスポ鍼:使い捨て鍼)
世界的にエイズやB型肝炎・C型肝炎・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が引き起こす院内感染が大きな問題となっています。
患者さんの血液や体液が注射針などの医療器具に付着し、注射針を誤って指などに刺した医師や看護師が発病するといった報告もあります。
このような危険を減らすために、当院の医療器具のディスポ-ザブル化(一回使用し廃鍼)を徹底、医療機関の注射と同じ基準で、当院では衛生管理を重要視しております。
よりやさしく、より再現性のある治療へ
SUPER LIZERの併療
当院ではSUPER LIZER(東京医研社製)による近赤外線照射(直線偏光近赤外線療法)を鍼灸治療と併療して治療を行っております。
SUPER LIZERは多くの大学病院や開業医の先生方が、様々な科で多くの疾患・症状治療に使われています。
SUPER LIZERの特徴として
①近赤外線は身体の中に一番深くまで届く光
②直線偏光処理した光は傷を早く治す力がある
この二つの特徴を持つSUPER LIZERと鍼灸治療と組み合わせることで、より効果が発揮されます。
深達性
体内の水に反応しない特殊な光を放出することで、深部の神経節に照射(SGR:星状神経節近傍照射)を行い、星状神経節ブロック(SGB)と同様の反応を引き出すことが可能です。
全身の血流促進
星状神経節照射後の手と顔の温度変化
星状神経節近傍にスーパーライザーを照射し、交感神経の働き(過緊張状態)を抑えることで、次第に副交感神経の働きが優位になり、照射直後、照射15分後と皮膚温が上昇していきます。
施術費用
初診料¥1,000
施術費¥5,000円(スーパーライザーも含む料金設定になっていります)
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はりきゅう院さくら
鹿児島県鹿児島市荒田1-3-3
📞099-814-7499
スーパーライザー | 妊活不妊治療 | 男性妊活 |
逆子治療 | 頭痛・肩こり・首こり | 突発性難聴・耳鳴り・めまい |
美容鍼 | 五十肩・肩の痛み | 腰痛・ぎっくり腰 |
自律神経疾患 | 小児はり | 顔面神経麻痺 |